【ツールVol.9】~アトツギの新規事業開発の思考法~ 第7回:潮流から汲み取る③「自分軸」の重要性
第6回では社会やビジネスにおいて将来の予測が困難になっている現代、いわゆる「VUCAの時代」について紹介してきました。(参照:【ツールVol.8】~アトツギの新規事業開発の思考法~ 第6回:潮流から汲み取る②『VUCAの時代』)
読んでみて、
「どうやったら先行きの予測が難しいVUCAの時代の中を生き抜けるのか…?」
「VUCAの時代を生き抜く自信がない…」
と思った方もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、世の中ですでに起こっている、小さな変化の兆しを捉えた上で、家業がどのように生き残っていくか、事例を踏まえて、紹介していきます。
VUCAの時代を生き抜くポイントは「自分軸」
VUCAの時代とは、Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をつなぎ合わせた造語であり、これら四つの要因により、社会やビジネスにおいて将来の予測が困難になっていることは第6回までに紹介した通りです。
VUCAの時代前は、データやロジックを駆使し、マーケットを絞って、資本を集中投下する、いわゆる「他人軸」に沿うことが重要視されてきましたが、先行きが不透明なVUCAの時代では不十分と言えます。
いくら時代の変化を読んでたとしても、それに合わせてビジネスを変化させるのは至難の技。
では、どのようにビジネスを展開すれば良いのでしょうか?
その答えは、時代の変化の中で大きな潮流を汲み取り、それに沿った形で自分自身の思い描く世界観を作る、いわゆる「自分軸」を元に行動することです。
時代の変化の兆しを捉える為に、潮流から汲み取る重要性や方法は第5回にて説明しました(参照:第5回)が、そこに自分が考える「やりたい」や「直感」や「妄想」などの要素を合わせに行くことがビジネスを行う上では大事とされています。
では、次に時代の変化の中で大きな潮流を汲み取り、それに沿った形で自分自身の思い描く世界観を作る「自分軸」のビジネスで成功を収めた家業を紹介していきます。
「自分軸」で成功を収めるマルニ木工
マルニ木工は広島県広島市に本社を構えている創業90年の家具メーカーであり、木工家具では業界大手として、米アップル社を初め、国内外の名だたる企業へ数千脚という単位の納入実績を持っています。
その華々しい実績の裏側では過酷なVUCAの時代を生き抜くヒントが隠れています。
今回は、マルニ大工の成功の秘訣を代表取締役社長:山中 武さんのコメントを読み解いていきたいと思います。
実は1928年創業のマルニ木工はバブル期の好景気によって富裕層をターゲットにした高級家具を作ることで莫大な利益を上げました。
まさに時代の変化に合わせて、マーケットを絞って、資本を集中投下する「他人軸」に沿ったビジネス手法です。
しかし、それも束の間、誰もが予測し得なかったバブル期終焉により、家具は売れにくくなり、厳しい経営状況に追い込まれたそうです。
そんな状況で、マルニ木工が取り組んだのはプロダクトデザインを一新すること。
当時、日本では家電やアパレルなど、あらゆる製品がデザイン性が求められる傾向にありました。
その大きな時代の変化を踏まえて、代表取締役社長:山中 武さんは家具においても同じようなデザイン性が求められる時代が来ると予測していたと言います。
そして、自分たちの強みである「細部までしっかりこだわった高品質な家具を、手の届く価格でご提供できること」を再定義し、世界の定番を目指して木工家具をつくり続けることにビジネスチャンスを見出しました。
その結果、辿り着いたのが上流となるプロダクトデザインを変えること。
その後、KDDIで爆発的に売上を伸ばした「INFOBAR」のプロダクトデザイナーを務めた深澤 直人さんと知り合い、「座り心地」「強度」「デザイン」、そして「買いやすい価格」を両立させる椅子づくりに着手し、現在でも評価が高い「HIROSHIMA(ヒロシマ)」や「Roundish(ラウンディッシュ)」「Lightwood(ライトウッド)」が生まれています。
まさに時代の変化の中で大きな潮流を汲み取り、それに沿った形で自分自身の思い描く世界観を作る、いわゆる「自分軸」を元に行動した結果とも言えます。
さいごに
ここまでVUCAの時代であっても、大きな潮流を汲み取り、それに沿った形で自分自身の思い描く世界観を作る、いわゆる「自分軸」を元に行動することが大事であると説明してきました。
先行きが不透明な時代では規模・業種・外資が競合になる可能性もあるし、逆にパートナーになる可能性もあります。
そのような中で、先行きの予測が難しいVUCAの時代の中では従来の考え方や見通し、戦略に固執していると足元を掬われてしまいます。
アトツギの方が新規事業開発を行うにあたって、第5回で紹介したSINIC理論で時代の大きな潮流を汲み取り、今回ご説明した「自分軸」を意識することで、精度の高いビジネスを展開できると思います。(参照:【ツールVol.7】~アトツギの新規事業開発の思考法~ 第5回:潮流から汲み取る①『未来を描く「SINIC理論」』)
マーケットや競合など「他人軸」を意識し過ぎていると不安な方は改めて「自分軸」を固めてみてはいかがでしょうか。
【参考ウェブサイト】
地域の未来を支える人|Japan Vision
http://web-ic.fukoku-life.co.jp/japan-vision/027.html?20161222143430
広島から世界の定番家具を目指すOA vol.6 株式会社マルニ木工 山中武|株式会社モーフィング
https://partner-web.jp/article/?id=492
デザイン一新で「世界の定番」家具を/屋根屋、新規ビジネスに活路