【ツールVol.6】~アトツギの新規事業開発の思考法~ 第4回:共進化から想像する
新規事業を考える上で掛け合わせのヒントとなる理論として、前回はムーアの法則をご紹介しました。2つ目のヒントを紹介する今回は、「共進化」について説明します。
共進化とはなにか?
共進化という言葉にはあまり馴染みのない方も多いのではないでしょうか。というのも、元来は生物学の概念で、その定義は「一つの生物学的要因の変化が引き金となって別のそれに関連する生物学的要因が変化すること」とされています。これだけでは分かりにくいかと思いますので、以下で具体例を用いて説明していきます。
共進化の代表的な例としては、ハチドリによるランの受粉がよく挙げられます。
鳥は花の蜜に依存している一方で、花は鳥のおかげで花粉が拡散され、生殖が可能となります。花であるランの視点に立てば、より効率的に生殖するためにも、蜜を吸いに来る鳥には他の花よりも主にランの蜜を吸って貰った方が良いことになります(他種の花に花粉を拡散しても繁殖には繋がらないため)。そのため、ランはハチドリの形に合わせ、ハチドリも花からうまく蜜を吸えるように花に合わせた形に進化していき、結果としてハチドリの嘴は長くなり、花の形は深くなったとされています。
また、シリコンバレーにおける研究機関と産業の関係も好例かと思います。
シリコンバレーは、アメリカ西海岸に位置する多くの先端企業が拠点を置くエリアとなっており、その名称はかつて半導体メーカーが多数集積していたことに由来します。また、GAFAの一角であるGoogle、Apple、Facebook社もシリコンバレーで誕生した企業です。
シリコンバレーにはスタンフォード大学を始めとした研究機関が複数存在していますが、これらが輩出した人材がシリコンバレーにおける産業を支え、育む一方で、企業が研究機関と連携することで更なる研究機関の発展に繋がっています。
共進化の理論をどう活かすか?
ではアトツギが新規事業開発を行う上で、共進化の理論をどう活かすことが考えられるでしょうか?
身近なところで起こる共進化として、例えばテクノロジーや文化が変化することで社会のあり方やライフスタイルが変化する、ということが考えられます。
直近の例で考えれば新型コロナウイルス感染症の影響で大きくライフスタイルが変わりました。この変化は既に多くのビジネスに影響しており、読者の方の家業にも少なからぬ影響を及ぼしたのではないでしょうか。
自分の身の回り変化をよく観察し、それが次のどのような変化をもたらすのか、について考えることで家業のリソースを活かした新規事業のヒントが得られるかもしれません。