2020.06.15
事業開発ツール

【ツールVol.5】~アトツギの新規事業開発の思考法~ 第3回:テクノロジーの進化『ムーアの法則(Moore’s law)』

前回の記事、『抽象化の重要性(アナロジー思考)』では、かつてシュンペーター氏が唱えたイノベーションの定義とは知と知の結合であること、つまり新規事業は「抽象化したモノの掛け合わせ」であり、抽象化する能力/掛け合わせることの重要性をご紹介しました。
今回から全3回に分けて、アナロジー思考で抽象化されたモノと掛け合わせるヒントとなるものを紹介していきます。

 

紹介する背景

アナロジー思考で抽象化されたレガシー産業のリソースと掛け合わせるものとして、最も重要なものの一つはテクノロジーです。テクノロジーの進化は目まぐるしく、皆さんもご存知のように自動運転技術の大躍進や株式市場の自動売買、医療分野においてもテクノロジーは大活躍です。
次節にて、そのような技術進歩をもとに提唱された「ムーアの法則」をご紹介します。

 

ムーアの法則とは何か

ムーアの法則(Moore’s law)とは、インテル創業者の一人であるゴードン・ムーア氏が、1965年に論文上で唱えた「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という半導体業界の経験則です。
半導体の微細化技術により、半導体の最小単位「トランジスタ」を作れる数が同じ面積で18ヶ月ごとに2倍になる、つまり面積当たりのトランジスタ数が1.5年ごとに指数関数的に増えていくことをムーアの法則は唱えています。
見方を変えれば、かつては専ら研究用に用いられたような高機能のトランジスタも、更に高機能にも関わらず、低価格で小さなものが開発されるようになり、例えばスマートフォンなどとして我々の日常生活にも活用されています。

画像引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87


画像引用元:
https://gigazine.net/news/20160213-post-moores-law/

 

テクノロジーの進化がもたらしたこと

ムーアの法則は、テクノロジー業界の急激な進歩を表しており、様々な業界のマクロ環境要因として、大きな影響を与えます。近年は、IT業界のみならず、一次産業をはじめとしたレガシー産業などにおいても、テクノロジーの活用は広がってきています。以下にその事例を記載します。

<機械ができること一例>
・農牛の乳搾り
・駅の改札
・金属の溶接
・倉庫の仕訳
・製品の検品
・建築現場での左官
・鉱山での採掘・運搬作業
・イベント会場の警備
・一般道路での自動運転
・林業での間伐材の選定
・プロレベルの将棋・チェス・囲碁
・株式の自動取引
・自動翻訳
・裁判の訴状作成
・企業の業績報告・分析書作成
・新聞記事の作成
・皮膚ガンの検知
・学生の習熟度に合わせた教材の選定
・外科手術

 

さいごに

アトツギの方々は、家業のリソースに掛け合わせるものを考える際に、テクノロジー業界の急激な進歩は見過ごすことはできないと考えられます。「ムーアの法則」に提唱されるように急激な進歩によって、旧来はIT業界だけが当事者でしたが、今やITとは程遠いと思われていたレガシー産業もこの進化のスピードを無視することはできなくなりつつあります。また、レガシー産業とITを掛け合わせて、すでに大きな業績を出している企業も多数存在します(旭酒造「獺祭」:徹底したデータ分析とITの活用で杜氏不要の酒造りを可能にした)。
皆さんの家業にテクノロジーを掛け合わせた場合、どういう変化が起こせるでしょうか?

 

【参考文献】
池田信夫( 2007)「過剰と破壊の経済学: 「ムーアの法則」で何が変わるのか?」アスキー・メディアワークス

【参考ウェブサイト】
日本経済新聞「最高の酒に杜氏はいらない「獺祭」支えるITの技」https://www.nikkei.com/article/DGXMZO83592100U5A220C1000000
「ムーアの法則」の終焉は何を意味するのか?
https://gigazine.net/news/20160213-post-moores-law/

記事一覧に戻る