【ツールVol.4】~アトツギの新規事業開発の思考法~ 第2回:アナロジー思考
第一回は「イノベーションのジレンマ&プロダクトライフサイクル」について触れ、「アトツギこそ新規事業を通じて破壊的イノベーションを推進していく担い手」となれるということを説明しました。
第二回となる今回は新規事業を考える上で活用できる「アナロジー思考」について説明します。
アナロジー思考とは何か
アナロジー思考は誰でも多かれ少なかれ使っているものの考え方です。日本語でいえば「類推」や「類比」という言葉が当てはまりますが、文字通り、「類似のものから推し量る」ということです。
つまり、もともと知っている領域を基にして、類似の関係にある対象領域に関する知見を推論するというものとなります。
具体的な日常生活でも、「たとえ話」や「穴埋め問題」や「謎かけ」などでアナロジー思考が使われています。
では、試しに「謎かけ」を通して、アナロジー思考を使ってみましょう。
【謎かけ問題】
いかがでしょうか?案外難しいと思われた方も多いのではないでしょうか。
謎かけがうまくいかないのは・・・
構成要素がつかめていないということが挙げられます。
構成要素がしっかり可視化されると「謎かけ」が出しやすくなります。
構成要素を出すためには対象を因数分解して、繋げることが重要です。
【思考プロセス】
Step1:まずは基となるキーワードを抽象化してみましょう。「アトツギ」というワードから連想される要素を書き出します。例えば、「ぼんぼん」、「相続が大変」、「親父が壁になる」、「受け継ぐ方は大変」などが考えられます。
Step2:ここでは、連想した中から「受け継ぐ方は大変」を選びましょう。
Step3:抽象化したキーワードを再度具体化します。「受け継ぐ方は大変」な具体例を考えてみましょう。例えば、「急な人事異動」、「お袋の味」、「中継ぎピッチャー」などが考えられます。
Step4:ここでは、「急な人事異動」を選択しました。
【謎かけ回答例】
このような思考を応用したもので、ビジネスにおける例として回転寿司が挙げられます。回転寿司は、ビール工場のベルトコンベアからヒントを得て開発がされたと言われています。
ベルトコンベアを抽象化して、他の分野へ応用された事例となります。
ある分野の事例を抽象化することで、他の分野に転用する考え方がアナロジー思考となります。
新規事業等の新しい領域での仮説を立てる場合にも、このアナロジー思考は活用できます。
つまり、既知の情報を因数分解し、未知の領域における類似性を探すことで新しい事業を考える切り口となります。
図でまとめると、下図のようになります。
そもそもイノベーションとは
世界中の経営者やビジネスマンにも大きな影響を与えている経済思想家であるヨーゼフ・アロイス・シュンペーター氏は、下記のような「新結合」を遂行することがイノベーション(新機軸・革新)であると定義しています。
1 新しい(結合による)製品やサービス
2 新しい(結合による)⽣産⽅法
3 新しい(結合による)販路
4 原材料の新しい(結合による)供給源
5 新しい(結合による)組織形態
イノベーションで定義される「新結合」とは知の掛け合わせ
「新結合」とは抽象化された「モノ」の結合と言えます。
既存の「モノ」と「モノ」の新しい組み合わせ
=イノベーション
=分解(要素)→ 抽象化(構造)→ 転用
=模倣
正確には「抽象化レベルのマネ」であることが大事であり、合法的にマネをすることを意識することです。
型(仕組み・構造)をマネして、アレンジしていくことでイノベーションが生まれるとも言えます。
「抽象化レベルのマネ」を行うのに、この部品となる知をつくるにはアナロジー思考が必要となります。
また、『資本主義・社会主義・⺠主主義』1942では、資本主義の発展のためにはイノベーションが原動⼒であり、家族や一族のためという一個人を超えた衝動こそが、「家族動機」というイノベーションの源泉であるとも言っています。
家族のため、先代から受け継いだものを守ろう、共同体のため、次世代のためにと願うある種の⾮合理的なアトツギの想いこそがイノベーションの要因となると言えます。
さいごに
新規事業(新しいアイデア)=既存の構成要素の分解+再構築と定義できます。
構成要素を知り 、できるだけ細かく「分解」し、 他との共通点を探して、 「繋げる」ことで、新規事業(新しいアイデア)が生まれます。
この構成要素を「分解」するのに、アナロジー思考の活用が必要となります。
アトツギが新規事業(新しいアイデア)を考えるには、家業にある有形無形の経営資源を分解して、抽象化してそこに「抽象化したモノ」を掛け合わせる(借りてくる)ことが重要であると言えます。
「他業種の構造を抽象化する能力」が必要となるので、業種に関わらず様々な業種をアナロジー思考を活用して構造レベルで捉えることで、新規事業(新しいアイデア)が発想されやすくなると言えるでしょう。
新規事業(新しいアイデア)は抽象化した「モノ」の掛け合わせと捉え、様々な業種の構造をアナロジー思考を通して見ていくことを意識していきましょう。
【参考文献】
細谷功(2011)『アナロジー思考』東洋経済新報社
【参考ウェブサイト】
アナロジーとは|アナロジーの意味とアナロジー思考のトレーニング法|事例有|Mission Driven Brand