2020.01.28
事業開発ツール

【ツールVol.1】経営デザインシートの活用

▼ツールをご紹介する背景

今までは基本的にモノ不足の時代であり、需要の総量が供給の総量より多い時代でした。それゆえ、新しい技術で新しい商品を作ると売れ、普及して、イノベーションが起き、利益が技術開発に向けられるという循環になっていました。ところが、昨今需要と供給の関係が逆転しました。基本的には人口増加程度しか増えない需要を供給能力が大きく上回ることになり、供給側がリードして新技術を作っても、選ばれないと売れない、つまり、需要側のニーズやウォンツが経済をリードする時代になりました。どういうサービス、ビジネスが需要側の共感を得るかを構想(デザイン)するデザイン思考が極めて重要になり、このシートの活用が内閣府から推奨されています。

 

ことアトツギにおいても同背景のもと、「次の10年、20年先の飯の種を蒔く」新規事業開発を行うにあたり、先代の作り上げた自社の経営資源やビジネスモデルを知り、需要側のニーズやウォンツに合わせた新しいビジネスモデルを構想するというプロセスは極めて重要です。

 

また、「これまで」・「これから」の自社の価値を生み出すしくみを先代とアトツギとがディスカッションを重ね協同で作成することで、事業承継における一般的な課題として言われている先代経営者とアトツギのコミュニケーション不足を解消できるという副次的効果も期待できます。

 

以上、アトツギの新規事業開発における課題および事業承継における課題の観点から、経営デザインシートの活用法をご紹介します。

 

 

▼ポイント

重要なのは、「価値を生み出すしくみ」を描くことです。

「価値を生み出すしくみ」とは、必要な資源を調達し、それらを組み合わせ、顧客の求める価値へと変換させ、提供するしくみのことです。

 

 

▼経営デザインシートとは

経営デザインシートは、将来に向けて自社が持続的に成長するために、将来の経営の基幹となる価値創造メカニズム(資源を組み合わせて企業理念に適合する価値を創造する一連の仕組み)をデザインして移行させるためのシートです。

 

もう少し掘り下げると、社会、市場へ伝えたい自社/事業の想い・イメージを明確化し、「これまで」の価値を生み出すしくみを把握し、「これから」の価値を生み出すしくみを構想し、今から何をすべきかを策定するための思考補助・デザインツールです。

 

 

シートの作成にあたって特に定まったフォーマットはありませんが、どこから埋めていくべきか行き詰まった場合は、まずは上部分に企業理念や全社的な経営方針を記載します。左半分に自社全体や事業のこれまでの経営資源やビジネスモデル、生み出す価値ならびに自社の課題を記載します。そして、右半分に自社全体や事業の将来の提供価値、それを生み出す収益の仕組み(ビジネスモデル)、その中で用いられる主要な資源を、左半分との違いを意識して記載します。そして、左半分の「これまで」と右半分の「これから」を比較することで、下の「これからの姿への移行のための戦略」が定まってくるという仕掛けになっています。

 

 

普段から将来の提供価値やビジネスモデルを関連付けて言語化していない企業はこのシートを埋めていくのは容易ではないですが、枠を埋める作業を通じて、関係者を巻き込みながら「考えをまとめる」ことは、事業承継にあたって現経営陣と後継者との話し合いに大きな効用をもたらすのではないでしょうか。

 

経営デザインシートの活用は、上記に挙げたほかにもさまざまなメリットを享受することが可能と考えられます。

・経営課題に気づき・整理し、将来の経営を考えるきっかけになる

・各事業のビジネスモデルのデザイン・見直しが進む ・新事業の構想ができ、新事業を立ち上げる上で必要な関係者と、ベクトル合わせができる 

・ 自社や事業の目指す方向性が視覚化され、ビジョン・コンセプトを関係者と共有できる

・ 社内外との対話のきっかけになる(コミュニケーションツールとして活用できる) 

・事業継承に向けて「これまでの経営者」「これからの経営者」の 対話のきっかけとなり想いが共有される

 

また、このシートを作成するにあたり、補助機能として経営資源の整理やSWOT分析などを行うことを内閣府は推奨しています。

 

 

これから承継をする方も承継後間もない方も、家業の経営資源の整理に始まり、これまでの家業の価値を生み出すしくみを知ること、これからのビジネスモデルを構想すること、これらを先代と協同で行うことは、円滑な事業承継と今後の家業の発展において極めて高い効用をもたらしてくれることと思います。

 

 

 

経営デザインシート、補助シート、活用方法のマニュアルなどについては下記からダウンロードできます。

 

■経営デザインシートのダウンロードはこちらから
全社用:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/siryou1.pdf
事業用:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/siryou2.pdf
簡易版:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/designsheet_kani.pdf

 

■作成用補助シートのダウンロードはこちらから
事業ポートフォリオ戦略:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/siryou4.pdf
経営資源の整理:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/siryou5.pdf
SWOT分析:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/siryou6.pdf
知財の活用:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/siryou7.pdf

 

■活用方法
入門編:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/designsheet_text_01.pdf
応用編:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/designsheet_text_02.pdf

 

■参考Web:
内閣府 首相官邸 知的財産戦略本部 経営をデザインする:
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/index.html

 

■出典
※1
企業の未来の事業性評価に役立つ「経営デザインシート」 内閣府知的財産戦略推進事務局長
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/kinzai20190715p28-33.pdf

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