【ツールVol.13】~アトツギの新規事業開発の思考法~ 第11回:ビジネスモデルキャンバスの活用
ここまでアトツギの新規事業のためのアイデア創出のための基本的な考え方を紹介してきました。
しかし、気を付けなければいけないのがアイデアは潜在的な既存の要素を組み合わせたものに過ぎず、
・顧客が本当に欲しいものなのか?
・本当に家業のリソースを使えるのか?
・収益に結びつくものなのか?
など、実現性を加味したものではありません。
新規事業として顕在化するためには、アイデアに具体性を付与する必要があります。
そんな時に考える必要があるのが「ビジネスモデル」です。
今回は「ビジネスモデルとは?」「ビジネスモデルを考える手順」について詳しく紹介していきたいと思います。
ビジネスモデルはなぜ必要なのか?
そもそも「ビジネスモデル」とは何なのでしょうか?
その答えを一言で言うと
「儲けるための仕組み」
と解釈できます。
「ビジネスを行う上で利益が出るのは当たり前」と思う方も多いでしょうが、具体的にここまで考えたアイデアが「どこで売るの?」「いつ売るの?」「なぜ売れるの?」「どのように売るの?」といった質問に即答できますか?
同じアイデアでもビジネスモデルが違えば、答え方が変わってきます。
家電を例にあげてみましょう。次の家電を見て、同じビジネスモデルはどれでしょうか?
家電商品と考えると機能は違えど同じに見えますよね?
しかし、付属品を取り換えるストック型の「消耗品」モデルとして考えるか、1回売り切って終わりの「小売り」モデルとして考えるかで同じ家電でも儲かるか否かはガラッと変わります。
実は昨今の成功しているビジネスは、商品、サービス、戦略を支える明確なビジネスモデルを持ち、事業体として強い性質があります。
もちろん、「ビジネスモデルなんて習ったことない….」なんて方も多いでしょう。
そこで、次にビジネスモデルを考える手順を紹介していきたいと思います。
ビジネスモデルを作るには何から始めれば良い?考える手順を徹底紹介
結論から言うと、ビジネスモデルを構成するにはフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」を全て埋める必要があります。
「ビジネスモデルキャンバス」はビジネスモデルを可視化するフレームワークとして普及しているもので、多くの企業や団体、起業家が使用しています。
実はビジネスモデルを作るフレームワークは複数ありますが、わたしたち当研究所では2つの理由からビジネスモデルキャンバスを推奨しています。
理由の1つ目は、ビジネスモデルキャンバスを作成することで検討が足りてない部分が浮き彫りになるからです。人は誰でも自分の好きなことや得意な領域に偏ってしまいます。好きや得意を活かすのは強力な推進力を生みますが、その一方でバランスが崩れたままでは趣味の域から脱することは出来ません。ビジネスモデルキャンバスを作ることで、具現化するための次の一歩が見つけやすくなったり、ムダな回り道を避けたり出来ます。
理由の2つ目は、他人とイメージを共有するためです。例えばチームで起業や新規事業に取り組む場合、目まぐるしい変化の中でいかにしてメンバー間の共通認識を保ち続けるかがとても重要です。また誰かに相談することもあるでしょう。その際にいかに自分のイメージを正しく相手に伝えられるかでフィードバックの質に大きな差が生まれます。ビジネスモデルキャンバスは100の言葉を尽くすよりも早く正確に相手と認識を共有することが出来ます。
では、「ビジネスモデルキャンバス」はどこから埋めていけば良いのでしょうか?
その順番を次の図にまとめてみました。
家業を用いたアイデアで起こりがちなのが、家業のリソースを意識する余り、「何を提供するか」にこだわり過ぎる考え(プロダクトアウト)になりがちです。
しかし、ビジネスは「顧客が第一」です。顧客が求めるニーズに合致したアイデアなのかを踏まえた考え方(マーケットイン)に立って、ビジネスモデルを組み立てる必要があります。
といっても、顧客ニーズを踏まえつつ、具体的な提供手段を考えるのは中々難しいかもしれません。
そこで、両者を統一しつつ、収益を出せるか検討するための6ステップも紹介します。
このステップを何度も行ったり、来たりすることでビジネスモデルは生まれ、精錬されていきます。
明確になった顧客、提供価値、提供フロー(チャネル)、家業のリソース、収益モデルに関しては、ぜひ「ビジネスモデルキャンバス」に記載しましょう。
星野リゾートをビジネスモデルキャンバスで解説
では、具体的に成功した家業のビジネスモデルキャンバスはどのような形になるのでしょうか?
ここでは、4代目アトツギの星野佳路さんが作り上げた星野リゾートについて、ビジネスモデルキャンバスを作ってみたいと思います。
星野リゾートは、軽井沢の「星のや」を始めとした長期滞在型の旅館を成功させ、その後、旅館の再生事業へと展開を進めています。
特に2005年のゴールドマンサックスとの提携により、旅館の所有と運営を分離したことで、事業展開のスピードが加速しました。最近では、REIT(不動産投資信託)も始めています。
従来、旅館といえば、所有者がそのまま運営を行っていました。しかし、所有者が必ずしも運営に秀でているとは限りません。そこで、投資家を募って所有をしてもらい、星野リゾートが運営に特化することで、旅館を投資対象に変えていきました。
星野リゾートのビジネスモデルキャンバスを書くとすると、こんな感じでしょうか?
もちろん、このビジネスモデルも定点的なものであり、事業の段階、プロセスに応じて変化をしていきます。
さいごに
今回は「ビジネスモデル」に関する紹介をしていきましたが、いかがだったでしょうか?
昨今の世の中は周囲のIT化、技術革新により差がつきにくくなっているため、優れた商品、サービス、戦略だけでは儲かりにくい形になってきています。
だからこそ、儲けるための仕組みであるビジネスモデルが大事になってきています。
今一度今日の家業のビジネスモデルを正しく理解し、必要があればビジネスモデルの刷新を含めて検討をしてみてはいかがでしょうか?
参考文献
星野リゾートのビジネスモデルイノベーション:https://www.lifehack-street.com/entry/2013/11/21/094504